ごあいさつ

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2020.02.01


ご あ い さ つ

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会
会 長  川 鍋 一 朗


 日本は、本年4月30日を以て「平成」から新たな時代へ移行することとなります。大きな節目の年を迎え、タクシー業界にとっても、新たな時代に対応した進化が益々重要になってくると感じているところです。

 さて、タクシー業界は、ライドシェアと称する白タク行為を解禁しようとする動きに対し、現在も戦いの最中に居ります。新経済連盟は、従来から、政府の規制改革推進会議、未来投資会議、国家戦略特区諮問会議、IT総合戦略本部等に対し、ライドシェア実現のための法的環境整備について繰り返し提案を行ってきましたが、昨年5月には、「ライドシェア新法」を国土交通大臣、経済産業大臣、規制改革担当大臣等へ提案しました。未来投資会議、国家戦略特区諮問会議においては、民間議員の竹中平蔵氏等が、ライドシェア解禁について度々発信するとともに「規制のサンドボックス制度」を提唱する等、強力に規制緩和を提唱しており、ライドシェア解禁を求める勢力は全く攻勢を緩めていません。
 昨年の規制改革推進会議については、タクシー業界側から白タク行為解禁に繋がる提案がなされたことにより、非常に厳しい対応を強いられましたが、最後は何とか引き分けに持ち込むことができたと思っています。これは、生誕から今年で108年目を迎える公共交通機関であるタクシーが、先人から脈々と築き上げてきた安全性に対する取組、地域交通への貢献をはじめとする様々な努力により、土俵の真ん中まで押し戻すことができたものと考えています。現在の規制改革推進会議は政令により本年7月31日まで置かれるものとされており、最後の年ということでより一層本腰を入れてくることは間違いありません。
 昨年5月、「規制のサンドボックス制度」を柱とした生産性向上特別措置法が成立しました。参議院経済産業委員会において「特にライドシェア事業のような安全や雇用に問題が指摘される事業の実証については、規制法令に違反するものが認定されることのないよう厳に対応すること。」との附帯決議がなされているところですが、今後の成り行きは全く予断を許さない状況にあります。
 依然としてタクシー業界が危機的な状況に置かれていることには変わりなく、引き続き政府の各種会議の検討状況を注視していくと共に、与野党の議員連盟の先生方、国土交通省等行政機関、そして全国の地方自治体等と緊密に連携をとりながら、ライドシェア解禁断固阻止に向けて全力を傾注いたします。
 一方、我々タクシー業界は、少子・高齢化社会が急速に進行する中、地方創生を担う地域公共交通機関・社会インフラであることを改めて自覚するとともに、利用者ニーズの多様化、IT化の進展、観光先進国の実現等に対応すべく、スマホ配車の普及促進、UDタクシー・妊婦応援タクシー・育児支援タクシー・観光タクシーの充実、乗合タクシー全国展開のより一層の強化、多言語タブレットの導入促進、キャッシュレス決済の拡充等、タクシー事業の更なる進化を図り、この国においてはライドシェアは不要であるということを行動を以て示したいと考えています。

 ライドシェア問題対策特別委員会で集中審議し、2016年10月の正副会長会議において決定した11項目の事業活性化策から成る「今後新たに取り組む事項について」への対応として、現在全国の仲間の皆さんが各地域の実情に応じ鋭意取り組んで頂いているところです。東京においては、全国に先駆けて「初乗り距離短縮運賃」を2017年1月30日から実施したところ、「ちょい乗り」需要の創出等の効果をもたらし、輸送回数、運送収入が上昇しました。利用者にとっても好評を得ているものと理解しています。このほか、運賃関係による活性化策については、国土交通省において、2017年8月7日から10月6日までの「事前確定運賃」を皮切りに、これまで「相乗り運賃(タクシーシェア)」「ダイナミックプライシング」「定期運賃(乗り放題)タクシー」に対応する実証実験が行われてきました。今後、これらの制度の導入に向け、国土交通省の指導を頂きながら取組を進めていきたいと考えています。
 また、全タク連では、2016年10月の11項目の打ち出しより2年を超えたことも踏まえ、全国の各協会の意見もお聞きしながら、この11項目に加えて新たなる今後のタクシー事業の活性化策を打ち出し、更なるタクシー事業の進化に邁進することとしています。

 一方、来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックを見据え、また訪日外国人が急速に増加している状況を踏まえ、全タク連では、昨年1月に「訪日外国人向けタクシーサービス向上アクションプラン」を策定し、訪日外国人のニーズに対応した安全で快適なタクシーサービスの向上に取り組んでいるところです。本年は、9月から11月にかけてラグビーワールドカップが開催されることからも、その取組を一層推進していきたいと考えています。

 なお、近年問題となっている訪日外国人向け白タク行為については、国土交通省、警察庁、法務省、観光庁等が連携し、対策会議の設置、実態調査の実施、啓蒙チラシの作成・配布、中国政府への協力要請等の対策を実施して頂いております。言うまでもなくこのような白タク行為は断じて容認できるものではなく、関係行政機関に対し、引き続き徹底した訪日中国人等を対象とした白タク行為の取り締まりを要望していきたいと考えています。

 最近、東京都内の繁華街を中心に横行しているWEBサイトで運転者と利用者を仲介するマッチングサービス「CREW(クルー)」については、その実態は、互助・共助を仮装した謝礼を得ることを目的とした白タク行為そのものでないかとの声があります。
 国土交通省は2018年3月30日、自家用車を使った運送で、利用者が支払う謝礼の範囲を明確化する通達を出しましたが、「CREW」は、表面的には国土交通省の指導に従いシステム変更を行って通達に沿った運営を行っているとしていますが、利用者の声を聴く限り、実態は通達の趣旨を逸脱し、評価が低い利用者はサービス提供を受けにくくなる仕組みが残っている疑いがあります。
 「CREW」については、引き続き注視していくとともに、国土交通省には、その実態解明と適切な対応を強く要望して参りたいと考えます。

 過疎地域等における生活交通の確保に有効な手段である「乗合タクシー」については、これまでも全タク連で事例集を作成し、これを活用した地方自治体への訪問活動等により、乗合タクシーの導入に積極的に取り組んで頂くようお願いしてきました。これに加え、昨年9月には、各タクシー協会が地方運輸局から御支援・御協力を得て、地方運輸局担当官と協働して自治体訪問活動等を行い、自治体との意見交換等を通じて把握した地域交通の課題・ニーズ等について、タクシー事業者として貢献できる取組をとりまとめた「地域交通サポート計画」を策定し、地域が抱える課題の解決に向けた取組を計画的に進めて頂くよう各都道府県協会にお願いをいたしました。各都道府県協会におかれましては、地方運輸局及び地元自治体と連携し、地域住民の生活交通の確保のため乗合タクシー導入等への取組を積極的に推進して頂きますようお願い申し上げます。

 2017年10月、タクシー業界が切望していた環境性能に優れたLPGハイブリッド且つユニバーサルデザインであるトヨタ自動車のJPN TAXIの発売以降、同車は昨年11月末までに8,933台販売されており、「ユニバーサルデザイン(UD)タクシー」の導入は、全国で急速に進んでいるところです。UDタクシーは、車椅子や小さな子供連れの方、高齢者、妊婦の方等に優しい車両であるというだけでなく、セダン型車両に比べて車両後部のトランクスペースが確保されていることから、大きなスーツケース等を携帯する観光客の利用にも最適であり、特に東京においては、オリンピック・パラリンピック開催までに1万台を導入することとしています。国土交通省におかれては、UDタクシーの導入補助について、従来より積極的に予算を確保して頂いているところですが、業界のニーズを満たすには難しい規模であり、全タク連といたしましては、引き続き同省に対し、予算拡充を積極的に要望していきたいと考えています。併せて、各都道府県協会におかれましては、引き続き地方公共団体に対し、UDタクシー導入補助制度の創設又は拡充を並行して積極的に要望して頂きますようお願いいたします。
 一方で、JPN TAXIの発売以降、車椅子の利用者等がUDタクシーであるにもかかわらず運送の申込みを断られる事例があるとの指摘が、国会、報道及び障害者関係団体等から度々なされています。この問題の解決に向けて、全タク連では、当該車両のハード面での改善を引き続きトヨタ自動車に対し要望していくこととしていますが、併せて各都道府県協会及び傘下会員の皆様におかれましては、UDタクシーの運転、予約、配車その他の業務に携わる従業員に対し、UDタクシーの運送に関する研修を実施する等の取組の推進をお願いいたします。

 「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が、昨年の通常国会で成立しました。タクシー業界においても、時間外労働の上限規制について、5年間の猶予期間中のうちに年960時間以内を実現しなければなりません。
 このため、全タク連では、昨年3月に「タクシー事業における働き方改革の実現に向けたアクションプラン」を策定いたしました。タクシー業界が魅力ある産業として広く認知されるためにも、アクションプランの目標として、労働基準関係法令や改善基準を遵守し、タクシー利用者の利便性の向上と事業経営の効率化を図り、若年者や女性をはじめとする運転者の確保・育成を行うこととしています。若年者の雇用に関しては、良質な労働力の確保と慢性的な運転者不足の解消を図るとともに、若年層の職業選択の幅を広げる観点から採用後の研修の充実・強化等を講ずることを大前提とし、第二種運転免許取得年齢の引下げ等取得機会の拡大の早期実現を引き続き要望して参ります。
 
 さらに、時間外労働時間の縮減を図るとともに年5日以上の年次有給休暇の取得の実現を図り、合わせて乗務員負担制度の見直し等賃金制度の改善に努めていくこととしています。
 また、自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画において直ちに取り組む施策のひとつに長時間労働の是正等に積極的に取り組む「ホワイト経営の見える化」事業者として認定する制度が現在国土交通省で検討されており、来年度からはこの制度が運用されることからも、各事業者ともに働き方改革に積極的に取り組む必要があると考えています。各都道府県協会及び傘下会員の皆様におかれましては、御理解と取組の推進をお願い申し上げます。

 改正タクシー特措法については、これまで2015年度に19地域、2016年度に8地域、2018年度に1地域が特定地域に指定されてきました。2015年に指定された特定地域については、昨年3月に示された特定地域の指定の期限の延長の取扱いに関する指針に則った審査の結果、2地域が指定解除、17地域が指定延長となりました。
 また、昨年11月には、これまで指定延長されていた17の特定地域について、2017年度輸送実績が明らかとなったことから、改めて地域指定の見直しがなされ、12地域が当初期限の末日から3年間延長、5地域が2018年度末を以て解除する旨の方針が示されたところです。引き続き、これらの地域を中心に適正化・活性化への取組を進めて頂きますようお願い申し上げます。
 なお、全タク連では、改正タクシー特措法施行における課題・要望について、各都道府県協会への意見照会の上、2016年1月18日付けで国土交通省に対し要望書を提出したところですが、特に、特定地域及び準特定地域の指定基準については、今なお改善を求める意見が寄せられているところです。引き続きこれらの課題等への対応について、国土交通省を中心に要望して参りたいと考えています。

 自動運転技術の進展を巡る状況として、政府は、昨年4月17日、自動運転等の実現のための政府全体の整備方針となる「自動運転に係る制度整備大綱」を決定しました。また、国内外の自動車メーカー等は市場化に向けての実証実験を加速しています。東京都内では、タクシー事業者による自動運転タクシーの実証実験も行われたところです。全タク連では、引き続きタクシー事業を根底から変革する可能性のある自動運転技術の進展を巡る動向について、注視して参ります。

 最後になりますが、会員の皆様の益々の御繁栄と御健勝をお祈り申し上げ、御挨拶といたします。