ごあいさつ

年頭の辞

ごあいさつ>年頭の辞
2021.01.01


年 頭 の 辞

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会
会 長  川 鍋 一 朗


 令和3年の新春を迎え、謹んで年頭の御挨拶を申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症については、現在一部の国においてワクチンの接種が開始された等の動きもありますが、世界的な流行はまだ暫く治まる気配がありません。日本においても昨年1月に初の感染者が確認された後徐々に感染が拡大し、4月7日には新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき7都府県について緊急事態措置を実施すべき区域とする政府の緊急事態宣言が発出、4月16日には全都道府県に拡大されました。
緊急事態宣言は5月25日までの間に段階的に解除されていきましたが、この間、タクシーは国民生活・国民経済の安定確保に不可欠な事業として国より事業継続が求められました。このことはタクシーの社会的な役割を改めて認めていただいたものとして大変誇り高く感じるものではありましたが、一方で人の移動が激減したことにより、全タク連の調査によると4、5月の営業収入は前年比で3割台まで急落する等、タクシー業界はかつて経験したことのない未曾有の危機に陥りました。緊急事態宣言解除後はGo To Travel事業をはじめとする政府の経済対策の効果もあり緩やかな回復基調を示す時期もありましたが、第3波の到来による感染者の増加に伴って、最新の11月実績では、営業収入は辛うじて7割で止まっているという状況です。コロナ禍における営業収入の激減により、タクシー業界は政府の各種支援策を以てしても非常に厳しい経営環境に置かれており、残念ながら廃業や事業休止となる事業者も出ている状況です。
 このような状況の下、全タク連では、これまで与野党のタクシー議員連盟を中心とする国会議員の先生方及び国土交通省、厚生労働省、経済産業省等に対し、新型コロナウイルス感染症により深刻な影響を受けているタクシー事業への様々な支援要望を積極的に行って参りました。これにより、政府全体としては、第1次及び2次の補正予算において雇用調整助成金の特例措置の更なる拡大、地方創生臨時交付金の創設、家賃支援給付金の創設、実質無利子・無担保融資等の資金繰り支援対策、Go Toキャンペーン事業の創設をはじめ、全業種を対象とする様々な支援策を講じていただいたところです。タクシーに特化したものとしては、国土交通省において需要激減に伴う臨時休車の特例措置の創設、準特定地域に移行した地域の預かり休車の復活増車に係る期限延長、タクシーデリバリーサービスの制度創設といった制度面での支援に加え、実証事業を通じた防菌シート・感染防止仕切板・タクシーデリバリーサービスに必要な保冷装置の導入等に係る支援、乗合タクシーにおける車両等の衛生対策等の実証事業の支援等の予算措置を講じていただきました。
なお、12月15日に閣議決定された第3次補正予算案においては、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の拡充」1兆5,000億円、「雇用調整助成金による雇用維持の取組の支援」1兆4,679億円が計上されたほか、国土交通省関係では「ポストコロナを見据えた地域公共交通の活性化・継続」として305億円の内数でタクシー及びバス事業者に対する集中的な支援等が盛り込まれております。今後、令和3年度当初予算も含めた予算の早期成立と速やかな執行を期待しております。
現在、全タク連では、タクシー事業者への経営助成、資金繰り支援、雇用調整助成金の拡充、公租公課の特例措置、Go To Travel事業の推進によるタクシー需要の復活を柱として陳情活動を行っております。
国民生活を支える地域公共交通機関として何とかこの苦境を生き残ることができるよう、引き続き与野党の議員連盟の先生方、国土交通省等行政機関を中心にタクシー業界への支援を強く要望していきたいと考えております。
一方、コロナ禍を生き残るためには、各種支援を前提としながらも、業界自らが活性化の取組を継続することが大切であると思っております。これまでも進めてきたUD車両、配車アプリ、キャッシュレス決済の導入等のタクシーを進化させる取組に加え、空気清浄機や防菌シート・感染防止仕切板の導入、タクシーデリバリーサービスの導入等、コロナ禍における新しい生活様式に対応した取組の推進も重要であると考えております。
非常に厳しい状況下ではありますが、景気回復期にタクシー業界が乗り遅れるようなことにならぬよう、やれることはやるという姿勢を今から示し実行していくことが重要であると考えておりますので、会員の皆様の御理解・御協力をお願いいたします。

令和元年10月1日の消費税率引上げと同時に予定されていた48運賃ブロックの通常運賃改定が先送りされた問題については、各地方運輸局の同年12月13日付け公示に基づき昨年2月1日より運賃改定が実施されました。この運賃改定が無ければ全国的な新型コロナウイルス感染症の影響による営業収入の落ち込みは更に厳しいものになっていたと思っております。各運輸局の公示は与野党の議員連盟の先生方による強力なお力添えによってなされたものであると考えており、改めてその御支援に心より感謝申し上げます。

新型コロナウイルス感染症の影響により延期となった東京オリンピックが本年7月23日から、東京パラリンピックが8月24日から開催の予定とされております。オリンピック・パラリンピックの開催までに新型コロナウイルス感染症の流行が終息することを期待しておりますが、いずれにしても感染症対策に万全を期し、大会成功の一助となるべくタクシー業界として輸送面でしっかり役割を果たし貢献したいと考えております。

ライドシェア解禁断固阻止という面においても、タクシー業界が活性化に取り組み、タクシーが進化しているということを国会議員の先生方、行政をはじめとする関係各所の方々に理解していただくことが非常に重要です。
菅政権誕生後に日本経済再生本部及び未来投資会議が行ってきた検討を引き継ぐ形で発足した成長戦略会議において、昨年12月1日にとりまとめられた実行計画では、タクシー事業やライドシェア解禁について直接の言及は見られませんでしたが、「足腰の強い中小企業の構築」「イノベーションへの投資の強化」「スーパーシティ構想の推進」等の文言が散見されます。引き続き成長戦略会議、規制改革推進会議等の政府の各種会議の今後の議論の推移を注視して参ります。
全タク連ではライドシェア解禁断固阻止に全力を尽くし、与野党の議員連盟の先生方、国土交通省等行政機関、労働組合、そして全国の地方自治体等と緊密に連携をとりながら、引き続きタクシーの進化を図り、日本においてはライドシェアは不要であるということを示していきたいと考えております。

 タクシー業界では、事業活性化20項目「今後新たに取り組む事項について」の各施策について、適宜その取組を進めているところです。この20項目の推進にあたって、昨年11月30日、新たな運賃・料金サービスである一括定額運賃及び変動迎車料金について国土交通省から通達が発出されました。このサービスは利用者の利便向上とタクシー需要の拡大につながるものであると考えており、会員の皆様におかれましては、サービスの導入に積極的に取り組んでいただきますようお願いいたします。また、その他の活性化項目につきましても、地域の状況を踏まえて検討され、実施可能な項目について取組を進めていただきますようお願いいたします。

 タクシー事業の原点である国民に対する安全、安心な輸送サービスの提供に関しては、これまで「ハイタク事業における総合安全プラン2020」に基づき、各種事故対策を行ってきたところですが、本年3月に国土交通省が策定予定の「事業用自動車総合安全プラン2025」を踏まえ、全タク連においては新たな総合安全プランを定め、関係者の総力を挙げて事故の削減に取り組んで参ります。

昨年4月から働き方改革関連法が中小企業にも本格的に適用されていますが、タクシー業界においても、2024年4月1日から時間外労働の上限を年960時間以内にしなければならない5年間の猶予期間中の3年目を迎えることになります。
 全タク連では「タクシー事業における働き方改革の実現に向けたアクションプラン」に沿って今後とも各種の取組を確実に推進することとしております。
 なお、改善基準告示の改正のための実態調査のアンケートが昨年末に行われました。該当された皆様におかれましては、御協力に感謝申し上げますとともに、今後とも行政への御協力をどうぞよろしくお願いいたします。
 また、タクシードライバーの人材確保については、今年度から3年間の事業として厚生労働省から受託した「就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業」についての一層のPRと的確な事業の運営に努めるなどにより、人材の確保を推進して参ります。
 特に、今年度から始まった運転者職場環境良好度認証制度(略称:働きやすい職場認証制度)につきましては、昨年末までにタクシー業界では一つ星に約500の事業所が申請されております。引き続き、人材確保のためにも同制度活用の御検討をよろしくお願いいたします。
 また、若年ドライバーの確保に関しては、長年に渡り我々タクシー業界が要望してきた第二種免許の取得要件の緩和について、ようやく昨年6月に道路交通法が改正され、来年6月までに実現の見通しとなったところです。

このほか、改正タクシー特措法に係る取組の推進、地域交通サポート計画を含む過疎地域等における生活交通の確保に有効な手段である乗合タクシーの推進、UDタクシーの運送に関する研修の推進等、各種の課題について的確に対応して参りたいと考えております。

最後になりますが、会員の皆様がこの未曾有の危機を共に乗り越えることができますようお祈り申し上げ、年頭の御挨拶といたします。