ごあいさつ

御挨拶2023bk

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2024.01.01


御 挨 拶

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会
会 長  川 鍋 一 朗


 令和5年の新春を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症については、昨年3月21日に18都道府県におけるまん延防止等重点措置が終了してからも、オミクロン株やその変異株の流行等によって断続的に第6波、7波が到来、11月以降も新変異株の流行が懸念される中で再び感染者数が増加し第8波が到来したとも言われ、依然として予断を許さない状況が続いております。各都道府県協会及び調査対象事業者のご協力を得て作成したサンプル調査結果によれば、タクシー業界の月毎の営業収入は、まん延防止等重点措置の終了以降もコロナ禍前との比較で7〜8割台が続いており、11月の実績もコロナ禍前比で約82.0%に止まっており、タクシー業界における需要回復は鈍い傾向が続いております。そのような中でもエッセンシャルサービスとして事業継続に努力されている事業者、乗務員の皆様には改めて敬意を表します。
 全タク連では、新型コロナウイルス感染症発生以来、タクシー事業者への経営助成、雇用調整助成金特例措置の延長、地方創生臨時交付金のタクシー事業への活用支援、資金繰り支援、運賃改定の速やかな実施をはじめとする「新型コロナウイルス感染症により深刻な影響を受けているタクシー事業への支援要望書」を毎月とりまとめ、これまで国土交通省、厚生労働省等行政機関及び与野党のタクシー議員連盟を中心とする国会議員の先生方への支援要望を強力に実施してまいりました。昨年10月からは全国旅行支援の開始とともに水際対策が緩和され、インバウンドも含めた人の動きに復活の兆しも感じております。タクシーの需要回復に期待しているところですが、国民生活を支える地域公共交通機関としての役割を果たし続けていけるよう、全タク連では引き続き関係者に対しタクシー業界への支援を強く要望してまいりたいと考えております。

 長引くコロナ禍の中で令和3年中から燃料価格の高騰が問題となっています。同年11月に国土交通大臣に対し「LPG等燃料価格の高騰により危機に瀕するタクシー業界からの要望書」を提出するとともに、12月には全日本トラック協会、日本バス協会と合同で「燃料価格高騰経営危機突破総決起大会」を開催する等、精力的に関係各所へ陳情活動を行ったこともあり、令和3年度補正予算において「タクシー事業者に対する燃料価格激変緩和対策事業」が措置されました。その後、令和4年に入るとロシアによるウクライナ軍事侵攻及び急激な円安等により、LPガス価格は従来以上に急激に上昇し、他の様々な物品の値上がりも重なり、タクシー事業経営においてさらに大きなコスト増要因となっています。
 全タク連では、令和4年3月及び4月に国土交通大臣に「LPG等燃料価格の高騰により危機に瀕するタクシー業界からの要望書」を提出、8月には全日本トラック協会、日本バス協会とともに国土交通大臣に「燃料油価格激変緩和措置等の延長に関する要望書」を提出いたしました。このような動きを受け、「タクシー事業者に対する燃料価格激変緩和対策事業」は、令和4年度予備費、令和4年度第1次補正予算を活用する形で数次にわたり延長がなされ、現在は第5期の申請受付がなされているところです。
 令和4年10月28日に閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」では、燃料油価格の高騰に対して、「来年度前半にかけて引き続き激変緩和措置を講ずる。具体的には、来年1月以降も、補助上限を緩やかに調整しつつ実施し、その後、来年6月以降、補助を段階的に縮減する一方、高騰リスクへの備えを強化する。」と記されるとともに令和4年度第2次補正予算で165億円が措置されました。本事業は、経営の危機に瀕しているタクシー事業者にとって大変有難い支援策であると感じております。世界情勢等も踏まえ、燃料価格が落ち着くまでの間、この支援措置が継続されるよう期待しております。

 またタクシー業界におきましては、令和6年4月1日から乗務員の時間外労働の上限を年960時間以内にしなければならない点も大きな経営課題となっております。今年4月には5年間の猶予期間の5年目を迎えることになります。さらに現在、中小企業に適用が猶予されている月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は、本年4月1日から50%になります。このことからも、時間外労働の削減に早急に取り組む必要があります。
 全タク連では「タクシー事業における働き方改革の実現に向けたアクションプラン」に沿って今後とも各種の取組を確実に推進することとしております。また、働き方改革に合わせて改善基準告示の改正のための審議が行われ、昨年末にはその内容が公示されました。今後、その対応を準備する必要があります。
 さらに、社会保険適用拡大のための法律改正が行われ、昨年10月から、従業員数が101人以上500人までの企業に対して、一定条件以上の定時制乗務員(パート社員)を社会保険に加入させることとなりました。そして、令和6年10月からは従業員数が51人以上の企業にも加入が義務付けられます。該当する場合は社会保険料の負担が増えることになりますので、早めの対策をお願いいたします。

 コロナ禍の間に全国のタクシー乗務員数は約2割も減少しており、当業界は深刻な人手不足の問題に直面しております。一部には人流の回復もみられるようになりましたが、今後需要が回復しても稼働率が上がらずに供給不足、コロナ禍前の売上に戻らないということも懸念されており、人材確保は喫緊の課題となっております。加えてタクシーの供給不足は「タクシーが無いのなら、他の交通手段を」という世論形成にもつながりかねません。コロナ禍で営業収入が落ち込む中での各種コスト増という厳しい経営環境ではありますが、これを乗り越え、乗務員の労働環境改善による採用強化は、タクシーが利用者の信頼を勝ち取るにおいても重要なアクションとなります。

 長年にわたり我々タクシー業界が要望してきた第二種免許の取得要件緩和等を盛り込んだ改正道路交通法が、昨年5月13日に施行されました。また令和4年度第2次補正予算においては、旅客運送事業者への二種免許取得支援措置があります。国土交通省において実施されている「女性ドライバー応援企業 認定制度」については、昨年12月時点で全国773事業所が認定を受けております。これらの制度を活用して、従業員の働きやすい施設・勤務形態を整備し、若年・女性乗務員を含む人材確保に積極的に取り組んでいただくことを期待しています。

 なおタクシー乗務員の人材確保については、厚生労働省から受託した「就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業」が3月で終了します。この事業は不安定な就労状況にある就職氷河期世代の方に二種免許取得の支援をしてタクシー乗務員としての正社員就職を目指していただくものです。この事業により少しでも人材確保が図られるように努めてまいりました。これまでの皆様のご理解とご協力に感謝いたします。

 もちろんこれらへ対応するためには、最低賃金引き上げも含む労働環境の改善、燃料価格の高騰、アプリ配車導入に関わるコストアップ等、時代の変化に伴い変化してきた事業構造に対応しつつ、更なる原資を確保していかなければなりません。全タク連では、そのためにも地域の実情に応じた適切な運賃の見直しが必要であると考えており、毎月の関係各所への支援要望書においても、これらコストアップ対応のための運賃改定の速やかな実施を要望してまいりました。
 全国の運賃改定の状況を見ると、令和4年中は札幌B地区を皮切りに8地域で運賃改定が実施されました。運賃改定の実現に向けて、それぞれの地域においてご尽力いただきました地元運輸局、国土交通省はじめ関係者の皆様に改めてお礼申し上げます。特に、東京特別区・武三地区については、物価問題に関する関係閣僚会議へ付議することとされており、その了承に向けて関係者に大変なご苦労をいただきましたことに、改めてお礼申し上げます。運賃改定を実施した地域においては、タクシーの更なる利便性の向上と乗務員の労働条件改善を図り、なお一層の安心・安全なタクシーを実現されますようお願いいたします。
 全国的な運賃改定申請の動きは現在も継続しており、国土交通省によると、昨年12月13日現在、43地域において運賃改定の審査中又は申請受付中となっております。今後、これらの地域において地域の実情に応じた適切な運賃改定が実施され、コロナ禍で多大なダメージを受けた我々の事業が少しでも改善することを願っております。
 なお、タクシー業界の要望を受け、国土交通省におかれては、昨年12月に運賃改定の申請について所謂「3ヶ月ルール」を緩和し、地域の法人車両数の7割以上の申請があった場合には、申請期間の3ヶ月を待たずに改定手続を開始する旨の通達改正を行っていただいたところであり、重ねてお礼申し上げます。

 コロナ禍を生き残り、さらに社会から選ばれるモビリティとなるためには、当業界への各種支援や運賃改定に頼るばかりではなく、業界自らも「進化」を継続することで、最も安全で信頼できる移動手段と評価していただくことが欠かせません。これまでも進めてきたUD車両、配車アプリ、キャッシュレス決済の導入等の取り組みに加えて、空気清浄機や防菌シート・感染防止仕切板の導入、タクシーデリバリーサービスの導入といったコロナ禍に対応した取り組みの推進も大切であると考えております。ウィズコロナ、アフターコロナの時代に移行する中、景気回復期にタクシー業界が乗り遅れることにならぬよう取り組みを実行に移し、決して「タクシーの進化」をあきらめることの無いよう、会員の皆様の引き続きのご理解・ご協力をお願いいたします。

 全タク連では、これまで取り組んできていた事業活性化20項目「今後新たに取り組む事項について」及び規制改革実施計画に盛り込まれたタクシーの利便性向上に向けた各施策について、今後も国土交通省と連携をとりながら適宜推進してまいります。
 事前確定運賃は平成31年4月26日、一括定額運賃は令和2年11月30日に施行され、各地域で順次導入が進んでおります。
 相乗りタクシーは令和3年11月1日に施行されましたが、コロナ禍という社会情勢の影響もあり、なかなか導入の進捗が見られない状況です。今後、人の動きの活発化とともに本制度を活用したサービスが普及することを期待しております。
 また、ソフトメーターの開発・運用については、令和3年に行った実証実験の結果を踏まえ、関係者によってソフトメーターとして備えるべき必要な基本仕様及び日本産業規格(JIS)の取得等の制度上の措置等について引き続き検討を進めることとされております。利用者から信頼され且つ事業者及び乗務員にとって使い易いソフトメーターの開発となるよう努力してまいります。
 事前確定型変動運賃については、昨年7月、国土交通省において「タクシーにおける事前確定型変動運賃の制度化に関する検討会」が設置され、制度の在り方について議論がなされております。同検討会は、令和4年度中に一定の結論を得ることとされており、今後の制度化にあたって利用者やタクシー業界に混乱を招くことがないよう引き続き国土交通省に働きかけてまいりたいと考えております。

 令和2年及び3年はコロナ禍の影響でタクシーを第1当事者とする交通事故は劇的に減少しましたが、昨年は増加に転じてしまいました。
 タクシー事業の原点である国民に対する安全・安心な輸送サービスの提供に関しては、引き続き令和3年3月に国土交通省が策定した「事業用自動車総合安全プラン2025」を踏まえ、同年4月に全タク連において策定した「ハイタク事業における総合安全プラン2025」に基づき、関係者の総力を挙げて交通事故の削減に取り組んでまいります。
 運行管理の高度化については、一昨年12月の遠隔点呼実施要領に続き、昨年12月に乗務後自動点呼の実施要領が定められ、乗務を終了した乗務員に対する点呼を自動で行うことができるようになりました。運行管理を高度化することによって、安全性の向上はもちろんのこと、乗務員や運行管理者の労働環境の改善についても期待しているところです。

 タクシー業界が活性化に取り組み、タクシーの進化について国会議員の先生方、行政をはじめとする関係各所の方々に理解していただくことは、ライドシェア解禁断固阻止という面においても非常に重要です。
 全タク連においては、国民の安全を脅かすとともに地方創生の担い手である地域公共交通の存続を危うくするライドシェアの解禁断固阻止のため、与野党の議員連盟の先生方、国土交通省等行政機関、労働組合、そして全国の地方自治体等と緊密に連携をとりながら全力を尽くし、引き続き日本においてはライドシェアが不要であるということを示していきたいと考えておりますが、そのためにもタクシーが進化し、社会からの信頼を得ていくことは不可欠であり、各地の協会や事業者での取り組みが重要になります。

 国土交通省においては、住民の豊かなくらしの実現に欠かせない存在であるバス・鉄道などの地域交通について、人口減少やコロナ禍の影響で一層厳しい状況であることも踏まえ、最新のデジタル技術等の実装を進めつつ、「共創」を推進し、地域交通を持続可能な形で「リ・デザイン」する方策を探るため、昨年3月に「アフターコロナに向けた地域交通の「リ・デザイン」有識者検討会」を立ち上げ、8月に提言をとりまとめました。提言の中でタクシーについては、近距離・小規模需要に対応する地域交通である「葉の交通」と分類され、多様なニーズに応じたドアtoドアの輸送を提供することができる公共交通機関として重要な役割を担っていることから、今後も地域交通の担い手として期待をされているところです。
 タクシーはこれからも各地で推進されているMaaSへ能動的に参画し、鉄道、バス等の交通事業者はじめ地域の事業者との連携を強化し、過疎地域等における生活交通の確保に有効な手段である乗合タクシー、貨客混載等に取り組み、柔軟で利便性の高いラストワンマイル・モビリティとしての役割を担ってまいる覚悟です。

 また、同提言では、自動運転やMaaSなどデジタル技術を実装する「交通DX」、車両の電動化や再エネ地産地消などの「交通GX」、➀官民の間 ➁交通事業者の相互間 ➂他分野との間の「3つの共創」により、利便性・持続可能性・生産性が向上する形への地域交通の「リ・デザイン」が、地域のモビリティを確保するというコンセプトの下で、さらに議論を深化させていくものとされております。これは「新しい資本主義」の実現にも資するものとして位置づけられております。タクシーを含む地域交通においても「DX」及び「GX」が今後大きな課題となることでしょう。
 タクシー業界の「DX」については、これまでもドライブレコーダー、自動日報、キャッシュレス決済、配車アプリ等、徐々にデジタル機器の導入は進んでいるところですが、運行管理、安全管理も含めた業務全般において今後益々取り組みの重要性が増してくると思われます。会員の皆様におかれましては、昨年3月に国土交通省において公表された「旅客自動車運送事業のためのデジタル化の手引き」も活用しながら、積極的な取り組みをお願いいたします。
 「GX」については、令和2年12月に政府において「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されているところであり、同成長戦略において「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現」と打ち出されております。タクシー業界としても政府方針を踏まえ、他産業に先駆けてカーボンニュートラルを実現できるよう積極的に取り組んでいきたいと考えております。
 このほか、改正タクシー特措法に係る取組の推進、UDタクシーの運送に関する研修の推進等、各種の課題について的確に対応してまいりたいと考えております。

 最後になりますが、皆様の益々のご健勝とご発展を願いつつ、現在の苦境を共に乗り越え全国一丸となってタクシー業界の再生を達成できるよう祈念申し上げ、年頭のご挨拶といたします。